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未病を治す                                                            2022年 8月15日

未病という言葉があります。

書いて字のごとく「いまだ(未)やまい(病)でない」状態を言うそうです。

今から二千年前の後漢の時代の中国最古の医学書といわれる「黄帝内教」に見られます。この中で「未病とは、病に向かう状態を指し、この未病をとらえて
治すことができたら医者として最高人(聖人)である。」と書かれています。

また日本では、1713年江戸時代中期に貝原益軒が83歳の時に養生訓の中で下記のように書いています。

予防が大事

「聖人は未病を治す」というのは、病気がまだおこっていない時に、あらかじめ用心すれば病気にならないことである。もし、飲食・色欲をがまんせず、風・寒・
暑・湿の外邪を防がないと、おかされるところは少しでも、あとで大病をする。内欲と外邪を慎まないため、大病となって思いのほか深く悲しみ、長く苦しむと
いうのが病気の常である。病気になると、病気自身の苦しみだけでなく、痛い針で体を刺し、熱い灸で体を焼き、苦い薬で体を攻め、食べたいものを食べず
、飲みたいものを飲まないで体を苦しめ、心をいたませる。

病気のないときに、あらかじめ養生をよくすれば病気はおこらず、目に見えない大きい幸福になる。

孫子がいうのに「よく兵を用うる者は赫赫の功なし」と。その意味は、兵を用いることの上手な人は、外に見える手柄がないということだ。なぜなら、いくさの
おこらぬ先に戦わずして勝つからである。また「古の善く勝つ者は、勝ち易きに勝つ者なり」ともいう。養生の道もこのようにしなければならない。

心の中で、ただひとすじに心がけて病気のまだおこらぬさきに、勝ちやすい欲に勝てば病気はおこらない。良い大将が戦わないで勝ちやすいものに勝つよう
なものだ。これが上策である。これが未病を治する道である。

とあります。

今から、2千年も前から予防医学の大切が言われていたわけです。

貝原益軒も、暴飲暴食を慎み腹八分を心がけていれば長生きが出来ると言っており、小さい頃は病弱であったにもかかわらず、養生を積むことで江戸時代
に84歳という長生きをしているわけです。






当時に比べ医学が発展している現代では、人間の仕組みというものがはるかに解明されてきています。未病を治す切り口も新しいものが分かってきています。

では、現代の解釈としての人間の仕組みをみていきましょう。

人間は、呼吸し、栄養を吸収し、要らなくなったものを排出して生きています。

呼吸は、肺で空気中の酸素を血液に送り込み、血液を通じて体内の細胞、筋肉や内臓や脳に届けています。各臓器器官で燃焼された酸素は二酸化炭素に
置き換わり、血液によって運ばれ肺に戻ってきます。肺では二酸化炭素は呼気として体の外へ排出され、吸気で取り込まれた酸素がまた血液に送り込まれ
ているわけです。生まれてから死ぬまで間断なく続けられる呼吸作用です。

一方の栄養の吸収は、食物や飲料として口から取り込まれたものが、胃で消化され、肝臓や膵臓からのホルモンと混ざりあい、小腸に送られます。

小腸では消化酵素が分泌されアミノ酸やブドウ糖衣に変換されて栄養分として血液に取り込まれるわけです。その後血液に入った栄養分は各臓器器官に送
られるわけです。送られた末端細胞では、酸素と栄養素が一緒になり神経系統から送られてくる指令で燃焼作用を起こすわけです。これが、運動となったり
思考となったり、消化となったりして人間の表に現れているわけです。

そして燃焼の結果不要になった老廃物は。血液にのって腎臓に送られ、そこから尿となって体外に排出されます。

一方小腸で栄養分を吸収されたのこりは、大腸におくられ便となって排泄されます。

ここでもう一つ大事な作用は、各細胞で燃焼のもととなる神経系統の働きです。

生きている生物はみな自律神経と言って、無意識のうちにも働き続ける機能をもっています。自律神経は運動神経と違って自らの意識で動かすものでなく
自然と動くように作られています。

ですからここに栄養と酸素が来たから働くのではなく自然に燃焼がおこっているわけです。

ただこの自立神経系は、植物の働きを見ても分かる通り、暑ければしおれ、寒ければ葉を落とすというように外界の影響を大きく受けるものです。

今見てきた、酸素、栄養分、神経系というものが人間を生かしている元と考えてよいと思います。

生きていくための3要素と言って良いと思います。

この3つのうち、呼吸と神経とは、黙っていても維持継続するようにできているので、とりあえずは自然に任せておくことができます。

難しいのが栄養の吸収です。

生きるに任せて食べていた当時は野生でしたからあまり食べすぎることはありませんでした。むしろ食料が足らず、飢えて滅びるのが一般的だったのでしょう。

ところが人類は進化し、文明を生み出し、生活を向上させてきました。

その結果として医学も発展し、長生きもできるようになりました。

そうして出てきたのが、食べすぎによる生活習慣病です。

今では、日本で糖尿病患者が1千万人もいると言われています。

栄養過多による病の発生です。
糖尿病に伴い、心筋梗塞や脳卒中、動脈硬化、
腎臓病、認知症、歯周病、神経障害とあらゆる病に結び付くと言われています。

なぜ糖尿病がおこるのでしょうか?それは、年とともに新陳代謝量が減るにもかかわらず食べる量は若いころと変わらないからです。

食べ過ぎて血液に吸収された栄養分は、ブドウ糖になって体中を循環します。

糖が多いとインスリンというホルモンが膵臓から分泌されて糖を減らしてくれる役目を果たします。しかし、いつまでも多い状態を続けると膵臓も疲れてしまい
糖尿病になってしまうというわけです。

ですから、年相応のカロリーを把握して、歳見合いの食生活に変えて行くことが重要です。

50歳以下の若い時なら、1日当たり男性は2700kcal女性は2100kacalですが5070歳では、男性は2400kcal女性は2000kcal
70
歳以上では、男性は2100kcal女性は1800kcal 位が適正と言われています。

仕事の量は、生活パターンにより多少は前後します。

そして、歳とともに食事の質をあげていくことも重要です。

特に意識して摂取するものは、緑黄色野菜、豆類、海藻類、玄米、果物といったものを意識して摂ることです。

肉類に比べて、野菜類は同じ量を摂ってもカロリーがはるかに低いですので食事の質を変えることでも、同じ満腹感を得ることができます。

歳とともに、肉や魚と野菜果物の比率を変えていくことです。

50歳前なら6:4であったものを70歳過ぎたら8:2にするくらいでちょうどよいでしょう。

これが現代の未病を治す方法の一つです。








さらに先ほど置いておいた、呼吸についてです。

黙っていても呼吸は繰り返し行われていますが、意識をしないと人間の肺は1/6位しか働いていないそうです。
これを放っておくと使われていない部分に停滞がおこり、やがては病のもとになります。

ですから気が付くたびに、肺全体の空気を入れ替えるようなつもりで深呼吸をおこなうことです。一日、朝、昼、晩の3回くらいは深呼吸をする習慣を取り入れ
て行きましょう。



そしてもう一つの神経系ですが、自然の状態で生かしてやるのが一番良いのですが、私たちが生活する中で必ず襲ってくるのがストレスです。

ストレスをため込んだままにしていると、燃焼系で不完全燃焼がおこり必ず病のもとになります。ストレスを感じたら、なるべく早く転換をすることです。

一番良いのは笑いです。

嘘でも良いから声をあげて笑ってみると、面白くて笑うのと同じ効果が得られるのだそうです。

意識して笑いのある生活を目指していくことです。

未病を治すのも原理が分かってくるとあたらしい方法が分かってくるものです。