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神経系を鍛える                                                        2023年 5月 3日


私たちが、自分を見たり、感じたりするのは、顔であり、眼であり、口であったり 手や足であったり、また、胃やお腹、頭の状態を感じたりします。

でも、そうした部位は単独では何も機能しないのは、皆さんもよくご存じことと思います。

そうした部位は、神経系統によって結ばれ、連携されているから、それぞれがその機能を果たせているわけです。

でも、神経系と言われても、実際にはなかなか見えないものですから、実感がわきずらいのも実際のところです。


先日、歯科医で興味ある話を聞きました。

昔は、虫歯等で歯が痛むと、痛みを抑えるために、虫歯の部位の神経を良く抜くという処方をしたものです。

しかし、最近分かってきたことは、神経を抜いてしまった歯は
 木でいうと枯れ木と同然な状態だそうです。

枯れ木ですから、外力には脆くて、再生することはないそうです。

一方、神経が残った歯は、生きていますから虫歯でなくなった部分はやむを得ないにしろ残っている部分は生きつづけているので、

いつまでも強度を保っているそうです。

そんなことが分かったものですから、今では神経を抜くという処置はやらなくなったそうです。

まさに、この事例のことが体全体で行われていると考えて良いのです。

神経が、体の隅々までいきわたっているから、私たちはこうして元気で活動を続けていることができているのです。




神経系の構造に少し触れておきましょう。

私たち人間の神経系は、まず中枢神経といわれる脳と脊髄で構成される部位と 末梢神経といわれる脊髄からのびて体の隅々まで行っている

部位に分けられます。


そして、末梢神経は、動物神経といわれる体性神経と植物神経といわれる自律神経に分けられます。

そして体性神経は、運動神経と知覚神経に分けられます。

もう一方の自律神経は、交感神経と副交感神経に分けられます。

体性神経のほうは、自分で意識して動かすことができ、自律神経のほうは無意識のなかで働きつづけます。

血液循環や消化吸収などを行う内臓系の神経です。

運動神経は手を動かしたり、足を動かしたりする、出力系神経で、知覚神経は、体のもつ五感で感じたものを脳に伝える入力系神経です。

交感神経は、活動し緊張させる働きをもち 副交感神経は、休息、リラックスさせる働きがあるそうです。



ここで、体の仕組みについてちょっと触れておきましょう。

人間の体には38兆個もの細胞があると言われ、その中で一番多いの赤血球で23兆個もあると言われています。

そして、この赤血球によって、栄養分と酸素が各細胞に運ばれています。栄養分は小腸で血液に吸収され、酸素は肺で吸収されて、

各細胞まで運ばれて行きます。でもただ送り届けられただけでは何も起こりません。


よく例えに使われる自動車のエンジンがあります。エンジンもガソリンと酸素がエンジンのシリンダに送られても、それだけでは何も起きません。

そこにプラグに電気信号を
送ることで発火が起こりエンジンの回転が始まるわけです。

これと同様のことが人間の体の中でも起こっています。

このプラグに送られる電気信号の役目を神経系が担っている訳です。

神経系の信号により、細胞ごとに、力になったり、熱になったり、思考のもとになったりと活動を始める訳です。

こうして私たちは活動を続けることが出来ているわけです。

このまま永遠に活動続けられれば良いのですが、細胞にも寿命というものがあります。

私たち人間では、ある程度まで活動した細胞は分裂して新しいものに置き換わっていくようですが、永遠ではなくて、

細胞分裂の回数券と言われるテロメアが所定の回数に達すると寿命となってしまうそうです。

それにしても人間では病等の障害にあわなければ120歳位までは寿命があるそうですので大事に使って行きたいものです。

さてそこで、長く大事に生かすためにということになります。

先ほど申し上げたように、血液中の栄養分と酸素が神経系の働きで活動のもととなっているのですから、これを如何に円滑に

動かし続けていくかということになります。

血液のほうでいえば、血管をつまらせてしまう脂肪を多くとりすぎない。

血管を硬化させてしまう塩分を摂りすぎない。

呼吸機能を鍛えて血液に常に新しい酸素を取り込む。

タバコは控えて肺の機能の健全性を保つ。

適度な運動で、血液の循環機能を維持する。

これら一般的に良く知られているところであります。




ここからは、一般的にあまり語られていない神経系の健全化について話してみたいと思います。

神経系ですが、使わないでいると退化してしまうのは進化の原則からも当然のことです。

末梢神経系の体性神経から見ていきましょう。

まず運動神経ですが、意識して体を動かすことにつきます。

動かすことで神経系も末梢の毛細血管を働きつづけることで元気さを維持できる訳です。

次に感覚神経ですが、これも意識して五感感覚を使うことです。

触覚は一番原始的な感覚といわれていますベースになる感覚です。

全身マッサージはとても有効です。

視覚は、人に最大の情報をもたらしてくれる感覚です。遠くを見たり、近くを見たり意識的に焦点を変えることが大事です。

聴覚は、心を落ち着かせたり、安らぎを感じることができます。

嗅覚は、良い匂いやおいしそうな匂いで元気をもらえます。

味覚は、なんといっても食欲のもとになる感覚です。

これらを意識しながら旺盛に使って行くことが大事です。

そして、体性神経に対する自律神経です。

主に内臓の動きをコントロールする神経です。

交感神経で活動し、緊張をさせて活発に働かせる。

副交感神経でリラックスし、休息させる。

これの繰り返しになります。

消化器系では、よく食べて、食べた後はしばらく休ませる。

歳をとると空腹の時間をどれだけ持てるかが重要だそうです。

循環器系とは、心臓や血管の器官ですから、血流を良くする運動や入浴と安静を保つ睡眠のバランスを大事にする。

呼吸器系は、意識して動かせる器官ですので、時々意識して深呼吸をしたり運動と安静を織り交ぜて肺機能を活性化させる。

こうして見てくると神経系の活性化のポイントは、意識して行うことの重要性が分かると思います。

どこかが病んだり、痛んだりしたときは、意識してそこに元気を送りこんでやることです。

人間も歳をとると、あちらこちらに支障が出てきます。

それを仕方ないと諦めるのではなく、使い込んで各部を活性化させていくことです。

神経系は、意識一つで何時までも元気でいられるものです。

認知症なども、細胞や神経が退化してしまった結果起こるものだとおもいます。

そうなる前に、使いこなして退化を防ぐことです。

矍鑠とした人は100歳を超えても明瞭な意識で過ごしています。

こうした先人に見習って、神経系統を何時までも若々しく保っていきましょう。