睡眠について 2021年 9月30日
人間が、肉体生命を維持する3大条件として、
1. 呼吸の作用
2. 栄養分吸収の作用
3. 老廃物の排泄作用
があげられます。
どれも生きていくうえで欠かすことのできない作用ですが、この三つに並んで大事なものがあります。それは睡眠です。
呼吸は10分も遮断したら人間は死んでしまいますからとても重要なものです。
これに次いでと言っていいくらい睡眠も大切なものです。
大昔の中国での処刑で一番残酷のものが睡眠を与えないものであったと言います。人間は、外部から刺激を与え続けて眠らせないでおくと10日も
持たずに死んでしまうそうです。
食べ物については、10日食べなくても何とか生命を維持できますから、睡眠がどれだけ重要なものか分かります。
それでは、人間はなぜ眠るのでしょうか?
昼間の活動で疲労した、体と脳を休めることによって回復させることだと言われています。
朝起きてから、体を動かし続けていれば体は疲れてしまい休息を望むようになります。
脳のほうも同様で、起きている間は脳は働き続けています。
ある研究では、人間は1日の間に3万5千回も何らかの決断をしているといいます。「何を食べよう」「何を着よう」「何時に出発しよう」当然そのもとに
あるのは脳による思考です。
こうした活動により疲弊した体と脳を休ませて復活させてやるのが睡眠というわけです。
睡眠の主な効能として次の項目があげられています。
1. 体の疲労回復
・昼の間は、交感神経が優位になり、血糖値や脈が上り筋肉の働きが活発になり疲労も蓄積してきます。一方睡眠中は、副交感神経が優位に
なることで、血圧や脈拍は落ち着いてきます。こうした中で蓄積した疲労が回復し翌日の準備状態にいれるのが睡眠なのです。
2. 成長ホルモンの分泌
・睡眠中は成長ホルモンが分泌され体の成長や細胞の修復、代謝を調節します。このホルモンには、アンチエイジングの役割があるのです。
3. 記憶の整理と定着
・起きている間に起こったことの記憶を整理してくれる働きがあります。
寝ておきる前日に起こったことがすっきり整理できたという経験があると思います。それと同時にその記憶を定着させてくれる働きがあります。
4. 免疫力の向上
・十分な睡眠によって、ホルモンのバランスが整い、免疫機能を発揮してくれます。睡眠不足だと、インフルエンザや風邪にかかりやすくなる
のはこのためです。
5. 食欲のコントロール
・体内では、空腹を感じ食欲を増進させるグレリンというホルモンと、 満腹を感じ食欲を抑制するレプチンというホルモンがバランスをとって
機能しています。睡眠が不足すると食欲を増すグレリンが増加し、レプチンが低下します。これに伴い、食べ過ぎによる体重増加、肥満が起こります。
6. 精神の安定
・睡眠をとることで、不安感やストレスが減ることが知られています。
極端に不安が増すと眠れなくなりさらに不安感による精神不安定を引き起こすという事態もおこりかねません。
こうした効果を見てみると睡眠の大切さがよくわかります。
ただ大事なことは、ただ寝る量を増やせばよいというわけではないようです。
死亡率に関するアメリカの調査では、1日7時間睡眠を基準とすると、3時間睡眠の人も、9時間睡眠の人も死亡率は2割ほど高くなるという調査がある
ようです。
それと、睡眠には2種類あるということを認識しておくべきです。
それは、熟睡することと安眠するということ。
熟睡は、質よく深く眠ること
眠は、安心して、精神状態を穏やかに眠ることです。
昼間、集中して働き、こまめに体を動かせば熟睡はできます。
安眠のほうは、精神的に追い詰められたり、心にやましいことがあると
熟睡はできても安眠はできません。日ごろから、ご自身の本心良心に背かない
生き方をしていることが重要です。自ら省みてやましいところがなければ安眠につながります。
両方を心がけ良い睡眠を確保することが重要です。
こう見てみたときに、日本の睡眠に関する意識はどうでしょうか?
睡眠を軽視してきた傾向を感じます。
少し前になりますが、大学受験の時「四当五落」という言葉がありました。
寝る間も惜しんで勉強し4時間睡眠なら合格するが、5時間睡眠では落第とい意味でした。
「不眠不休」の努力とか、「寝る間も惜しんで」「寝ても覚めても」等寝ることを忘れて努力しなければならないと古くから言われてきたようです。
このためか、日本人の睡眠時間は外国人に比べてはるかに短いそうです。
このため国際間の活動になると、しっかり睡眠をとる外国に比べて、睡眠の少ない日本人は大事なビジネスチャンスでの大事な判断に後れをとり
大きな損失をだしていると言われています。
睡眠の大切を見てきましたが、睡眠の起源について触れておきたいと思います。
睡眠は脳を休めるためだから、脳のある生物だけに固有したものという説が一般的でした。
生き物が進化してきた過程で脳を獲得したときから、睡眠が必要になったというものです。前述の効果の中でも脳に関する要素がとても多いので
うなずける部分もあります。
でも、最近の研究の中でクラゲの睡眠について研究した大学があります。
クラゲは脳を持たない生物なのですが、その動作傾向をみるとどうも睡眠をしているようだということが分ったそうです。
こんな研究もあります。
植物の昼と夜の活動状態をみると、当然、光合成をするのは昼の太陽光を浴びている時間で酸素を作り出して大気に放出しています。
夜は、呼吸の作用のみになるのですから、状態は当然違うのですが、夜は枝が垂れ下がって寝ているようだという研究もあります。
考えてみますと、我々生き物はこの地球上で生を受けてから38億年に及ぶ長い期間にわたって生命をつないできているのです。
その間、地球の自転軸と公転面がほぼ直角であるということと、自転周期が24時間ということから、1日24時間で昼と夜がおよそ半分ずつと現象が
生み出されているのです。
この摂理に基づくなかで、生命は命をつないできました。
その中でずーと昼と夜を繰り返してきました。
眠るという行為の起源は、ここに根ざしていることは間違いないのです。
我々、人間のような睡眠ではないにしても、生きとし生けるすべてはこの24時間の摂理に基づいて生きているのです。